異物検査試験の必要性

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普段の食生活で、食べ物が腐っているのではないか・お腹を壊すのではないかという不安を抱えながら食事をすることはそこまで多くありません。日本ではあまり不安に感じずに食べ物を口にできていますが、このように食べ物が安心して消費者に提供されるために様々な試験を経て商品棚に並んでいることは知っていますか?今回は異物検査試験についてお伝えします。

消費者の安全のため。そして企業を守るために異物検査は行われる

食品は加工されたり調理されたりと様々な工程を踏んで商品として店頭に並びます。このたくさんの工程の中で例えば袋の切れ端が混ざった状態で梱包されてしまったり、虫が入ってしまうなど様々な可能性が考えられます。

工程を踏むほどにどうしてもこのような異物が入り込んでしまう可能性は高くなってしまいがちです。もしこのまま消費者のもとへ行ってしまえば、その商品に対して不信感が強くなり食べたくなくなってしまうのと同時に、製造会社への信頼も損なうことになってしまいます。

このようなことを防ぐために、異物検査試験では製造過程で厳しく検査が行われ、消費者や企業のことを守る大切な役割を担っているのです。『参考資料|食品異物検査

過去に人の指が切断し、その肉片が食品に入り込んだ事件も

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異物検査試験は年々厳しさを増しかなりシビアな環境下で行われていますが、その背景には過去に製造過程で人の指が機械に入り込んでしまい切断され、その肉片が食材に混ざった状態で出荷されてしまうという事件がありました。

コンビニで買ったおにぎりを食べたところ、異物に気づいた消費者の通報で発覚し、大きな問題として取り上げられました。いくら徹底した環境下で作ったとしても、このようなトラブルは0にすることはかなり難しく、その対策として何回も異物検査をすることで消費者の手に渡る前に食い止めているのです。

消費者の安全やトラブルを最大限防ぐために、厳しい試験を何度もくぐってきた商品が消費者に届けられています。

個人が異物検査を依頼することも可能

異物が入っている気がすると思った時、購入したお店に問い合わせる人が少なくありませんが、自分で異物検査試験をしてくれる研究所に問い合わせることも可能です。

食品を分析してくれる研究所は国内にもいくつもあり、異物かどうかを調べてくれるだけではなく、どのような理由で入り込んだのか、入らないようにするための改善策なども研究しています。異物だけではなく、異臭に対する研究をしている研究所もあります。

私たちが日々安心して食べ物を口にできるのは、このような研究所が常に試験などを行い詳しく調べてくれているからなのです。企業も自社に異物検査機器が揃っていない場合には研究所と提携して都度異物検査を依頼しています。

原因の追究までしてくれるため、企業としても対策しやすく安心できる存在なのです。

どんな異物があり、どんな機器を使っているのか

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異物検査では目に見える異物だけではなく、目視で確認できないような細菌類まで調べることができます。マイクロスコープ、試薬、FT-IRなど様々な機器を使い、形だけではなく異物の成分なども分析でき、金属なのか繊維なのか、ガラスや結晶なのか、などこと細かく調べることができます。

異物は実に様々な種類があり、金属類、虫、ガラス、カビなどあらゆるものが異物の対象となります。理科の実験などで顕微鏡を使うことが少なくありませんが、研究で使われている機器の精度は顕微鏡の何百倍もよく見えるマイクロスコープなどが使われています。

繊維の隅から隅まで見ることができるため、どんなに小さな細菌も見逃しません。赤外線やX線のように光を通して検査する方法もあり、中には音波の跳ね返りで調べる方法もあります。このような様々な方法を重ねることで安全を確認しているのです。

もしも異物が混入してしまいトラブルになっても、こうした細かな分析で原因を追究することができれば再発を防止することができ、速やかに対応することで企業は信頼を回復することができます。どうしてもトラブルはゼロにすることはできず、異物混入などのリスクはつきものです。

問題はトラブルが起きてからの対応にあることが多く、消費者への対応の遅さや原因追及の遅さによって消費者からバッシングを受けていることが少なくありません。原因や対応を知りたいと思っている消費者へ迅速で丁寧な対応を心がけることで信頼も時間がかからずに回復することができます。

研究所はこうしたトラブルを解決するために心強い味方なのです。

食べ物以外でも検査はされている

今回は主に食べ物に対しての異物検査についてお伝えしましたが、食品以外の化粧品や薬品、肥料など消費者に対して提供されるもの殆どが異物検査をされて提供されています。目薬などは薬を調合する前の段階の水から詳しく検査され、注射で使えるくらいの純度にしてから薬が調合されて作られており、ペットフードなども大切なペットを守るために厳しい検査が行われています。

家電や日用品でも異物検査は行われています。口にするものではなくても、もし家電の配線の中に異物があった場合には動かなくなるだけではなく、最悪感電してしまう可能性もあり大変危険です。ティッシュペーパーなどにもしガラスの破片などが紛れ込んでいる場合には、肌を傷つけてしまうことにも繋がります。

このように異物があることで日常の様々な場面でトラブルになってしまう可能性が多いのです。一度痛い思いや苦しい思いをしてしまうと、トラウマになってしまいその商品を買いたいと思えなくなってしまう場合もあります。

そうならないために日々厳しく様々なものを検査して、安心して消費者が購入できるように配慮しています。私たちが普段から何気なく食べているものや使っているものは、このように知らないところで厳しい試験を繰り返されているからこそ安心して購入することができているのです。

当たり前のように購入し当たり前のように使っているものも、たくさんの人が研究・分析して商品となっています。簡単にものを捨ててすぐに新しいものを購入する人が少なくありませんが、食べることができるありがたさや使えることへの感謝を忘れてしまいがちです。

商品として並ぶ前だけではなく、消費者が利用中に異物が混入してしまう可能性もゼロではありません。すべて企業やお店の責任とは言い切れない場合も少なくありません。消費者自身も日々の生活で意識しながら使っていくことが必要なのではないでしょうか。