点眼の異物検査で使われる標準品や点眼の歴史

顕微鏡検査1

食べ物や物を製造する際には国内では必ず異物検査をはじめとする様々な検査が行われています。コンビニでも気軽に購入できる目薬などの点眼も、商品棚に陳列される前に異物検査が入念に行われています。今回は異物検査で使われる標準品や点眼の歴史などについてお伝えしていきます。

何を基準に標準品として決められているのか、そもそも点眼はいつからあるものなのか興味のある人は参考にしてみましょう。

検査で使われる標準品とは?標準品の基準は何か

異物検査はその名の通り、異物が混入していないかを検査する作業です。目に見える状態で混入していることもあれば、目に見えないけれども成分自体が異物である場合もあり、様々な検査方法で入念に調べられています。物を製造する際には一般的には大量生産されることが多く、その場合は検査結果を明確に出すために厚生労働大臣が検査薬を一定量にするように取り決め、品質が一定になるように調製された物が日本薬局方の標準品として決められることになりました。

標準品は厚生労働大臣の登録を受けた企業・人が製造できる標準品、国立感染症研究所が製造できる標準品などに分類され、標準品の種類は実に多くそれぞれ使用用途が異なり、物によって使い分けて検査で使われています。

そもそも点眼はどのようにして作られるのか

点眼に異物が入っていた場合、目を傷つけてしまう可能性もあり異物が混入している状態は非常に危険です。そのために点眼に異物が入っていないかが慎重に検査されています。そもそも点眼はどのように作られているのかを知っているでしょうか。

1滴目に入れるだけで抜群の効果が現れる点眼ですが、ひとつの点眼が作られるまで様々な工程を踏んでいるのです。点眼は主に多くの水分から出来ています。まずはベースとなる水の厳選が必要になります。もちろん水道水を使っているわけではありません。

飲料水として国の基準を満たしている原水を利用し、そこから不純物を取り除く工程が入ります。この作業は数段階に分けて行われ、まずは化学処理、続いてイオン交換処理、最後に蒸留処理という大きく分けて3工程を踏んで綺麗な状態にしていきます。

泥水をイメージするとわかりやすいのではないでしょうか。まずは目に見えるゴロゴロとした石を取り除き、目の荒いネットで小石を分けていき、更に細かいネットで小さな砂利を取り除いてどんどん水だけの状態にしていくような工程です。

3工程の処理を踏むことで、注射で使用する水と同じくらいの純度になるそうです。この工程の際にもそれぞれの段階で異物検査が行われています。ベースの水を作り終えたら、次は薬の原料となる物を混ぜて作っていきます。

原料も機械で精密に計算されて出された数値の通りに配合していきます。このように目薬が調合されるまでに様々な段階を踏んでいることがわかります。それと同時に工程が多い分何かの拍子で異物が入り込んでしまうリスクもゼロではなくなるのです。

これらをしっかりと見つけ出して消費者の手に渡らないようにするために、異物検査や標準品など多くの方法を使って検査が繰り返し行われています。

点眼の歴史や、細かく標準品などが決められるようになった理由

エジプト時代に目脂に虫が付かないように目に薬を塗っていたのが点眼の由来と言われています。日本では安土桃山時代に二枚貝の片方に薬を入れ、もう片方に水を入れて指で薬を取って水で薄めて目につけるという方法が点眼の原型でした。

現在のようなスポイト状の形になってきたのは1930時代に入ってからで、それまでは瓶からスポイトで吸って目に点眼していましたが、衛生面で問題視する声が増えたことで改善する必要がありました。これらの歴史からもわかるように、人の身体に直接薬を入れることなので、常に衛生面なども並行して考えていかなくてはならなかったのです。

医療技術や医療機器がそれほど進歩を遂げていない時代のため、この当時の点眼液は目に見える異物は取り除けたものの、目に見えにくい異物に対しては詳しく調べることができなかった可能性が考えられます。

1957年には点眼液が原因で女性が死亡するというショッキングな事件が起こりました。

何らかのアレルギー反応だったのか、副作用が原因となったのか明確な原因はわかっていません。このようなことから、医療技術の発達と共により精密に検査して販売するようになっていきました。令和になった現在では機械で精密に量を図り、非常に精密な検査が行われています。

多くの異物検査・標準品にはそれぞれの意味があり、役目がある

このように長い歴史や様々な事例を踏まえて製造行程から検査まで細かく取り決められるようになりました。標準品だけでも100種類を超える数の物がありますが、それぞれが純度を調べる試験で使われたり、調合された薬品が均一に容器に入っているかを調べるのに使われたりと大切な役割を担っています。

薬品と標準品の相性もあるため、それぞれきちんとした検査ができるように検査前に実験してから使われています。標準品の中にはよく見聞きしたことのある名前もあるのではないでしょうか。医療で使われるものは食品以上に慎重に検査が行われています。

更に、改良の余地がないかどうか常に実験に実験を重ねて研究が続けられています。

人の手による検査と機械による検査はどちらが優勢か

異物検査は通常機械で分析し量が算出されていきますが、実際の検査は人の手と目に託されている場合が多くなっています。時間もかかり人件費も嵩み、地道な作業となります。一方で効率性を重視して、画像処理システムを応用して作られた機械による自動検査装置が発明されました。

コンピュータに異物となるものや成分を認識させておくことで、効率的に異物を見つけ出すことが出来るというものです。人口減少や人手不足が取り沙汰されているため、実用化されることで大きな改善が見込めるでしょう。

人手不足による一人一人が抱える作業が多くなることで効率も悪くなり、最悪の場合見落としてしまう場合もゼロではありません。ただし、どれほど技術が進歩しても人の目に敵うものはないと言われています。目の精度は機械で表現できないほど緻密で精巧な作りになっており、技術が進歩しても人の目以上のシステムを開発できた企業はありません。

このことからもわかるように、どうしても機械では見つけにくいことがあるのもまた事実なのです。機械に全て任せるようになるのはまだまだ先になりそうです。しかし、機械が進歩したからこそ様々な材料を緻密に計算することができ、機械で分量を計り研究することができるからこそ国が認めるような標準品を作ることができるのです。